エリート医師に結婚しろと迫られてます


彼が、クスッと笑った。
彼の指が、すっと伸びて私の背中に回る。

後ろのホックを外された。

「何するの?」

「打診だよ」

西瓜を叩いて判断するのみたいに、心臓の大きさや肺の空気の入り具合を診る。

「ホックは外さなくてもいいでしょう?」

「恋人の体を見るのに、許可が必要?」

「打診してたんじゃないの?」

「それは、ついでだよ」

彼の指はいつの間にか、
診察を打ち切ってキスを続けるために私の頭を支えている。

恋人?

いつの間にか付き合ってることになってる。

私は彼と付き合ってるのだ。

私の方が、こういう状態になれなきゃいけないんだ。

私は、宙ぶらりんに浮いた手を、森谷さんの背中に置いた。


「んんっ…」

何かにスイッチを入れたみたいに、
彼の腕に力が入り、ぎゅっと抱きしめられる。

彼の体が動くたびに、ベッドのスプリングがキュンと鳴る。

「ああ…麻結…お願い。腕、そこだと動けないから首に回して」

意味が通じてるのかわからないけど、お互いわけもなく見つめあう。
こうしてると、たまらなく幸せ。

ああ…もうダメ。
下に行って、家族の顔が見られない。

でも、恋人に、こうして抱いてもらっている幸福の方が勝っていて、お行儀のいい可愛い娘の役目なんかどうでもいいと思う。

そのとき、どこからともなく、
ピッピッという音が聞こえた。
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