エリート医師に結婚しろと迫られてます





「春ねえ…」


「お花見には、出掛けられましたか?」

私は、心から微笑ましいと思う気持ちと、営業的な微笑みを浮かべて、今日の最初のクライアントである野崎さんに、笑いかけた。


今日の野崎様は、全身春いろ。
気に入りブランド最新作を、
身にまとっている。


その姿を見ていて思い出した。

先週、母がふらっとやって来て、買い物に付き合わされた。


母の買い物コースは、いつも決まっている。デパートを上からしたまで見てから、お気に入りの店に立ち寄るのだ。

ああ、思い出した。それだ。

どこかで見た事があると思ったら、それだ。マネキンが着せられてたのと同じものを、野崎さんが着てる。


「やあ~ね。桜餅みたい」と母が言ってた。


「こんなの着ると目立つわよね」
母がため息をつく。

「でも、暗い色の洋服が多い中で、こういうの着ると夜桜みたいに目立っていいかも」


「よしてよ」
嫉妬と羨望の入り混じった声で母が言った。
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