エリート医師に結婚しろと迫られてます
私は、何も答えられずにいた。
「どうしたの?」
「森谷さんって…本当に私なんかでいいの?」
頭が混乱して、うまく言葉に出来ない。
「いきなりどうしたの…それがどうかしたの?」
森谷さんは心配そうに私の顔をのぞき込む。
彼は、呆然としている私を気遣ってくれて、話を聞くからと言ったり、私の気をそらしたりしてくれた。
「麻結…黙ってないで、ちゃんと言って。どうしたっていうの?」
それは、洗練されていた。
その置物一つ見れば、彼のこと、この部屋のことを、どれだけ考えられてここに置いたんだろう。
置物一つで、その人のことが想像できる。
私には、考え付かないようなセンスで、
部屋にあった、きれいなもの。
そして、人もうらやむセンスを持って、自分自身も美しい人。
この部屋に飾るなんて思い付くのは、
何度もここに来て、
彼の事が好きだった人だ。
「麻結、お願いだから、そんな顔しないで」
「これ、とてもきれいだね。でも……
どうしてここに置いたままにしてるの?その人のこと、まだ思ってる?」
私はまだ、見たことのない彼女のことを考えると、どうしていいのかわからなくなった。
嫉妬なんかじゃなくて。
この部屋にも、彼にも、見たことのない彼女の方がふさわしい。
そのことに何も言い返せないことだ。
私は、彼にふさわしくない。
あるいは、彼にふさわしいのは私ではなく、自分だという女と、戦わなければならないのだ。