【短編】君が手を伸ばす先に
**

いつまで経っても連絡が来ない。

そう思いながら窓を見ると、花乃が門をくぐって出ていくのが見えた。

今日の講義は終わったのか。

もう薄暗いのにどこに行くんだろう。

少し気になって見ていると、花乃の最寄り駅の路線とは反対の方向に曲がった。

特に何もない民家が立ち並ぶだけの通り。


いやいやいや。

それは危ないだろう花乃。

もう暗いぞ、女の子一人でどこ行くっていうの。
実家もそっちじゃないだろ。


考えだすと居てもたってもいられなくて、そっと講義を抜け出した。

運の良いことに、集中しているのか誰にも見咎められなかった。

心配で禿げるっていうのは、あながち間違ってないかもしれない。




**

しばらく見失ったが、少し走ればすぐに見つかった。

どこへ行くのだろう。


しかし花乃は僕に悩み事を知られたくないはずで、ならば僕は介入してはいけない。

こんなにコソコソするのは趣味じゃないけど、仕方ない。

何も起こらないように、ガードに撤するのが僕にできることだ。


そうしてついていくこと数分。


「何だ、ここは」


墓だった。自問自答で解決。

花乃の親族の墓か。

そういえば大好きな祖母がこの間亡くなったと言っていた。

あの時は散々泣いて、立ち直ったと思っていたけれど。

まだ引きずっていたのか。

気づいてやれなかったのが悔しい。


花乃はある一つの墓の前にしゃがんだ。


そして軽く微笑み、






「祈……」







僕の名を呼んだ。














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