【短編】君が手を伸ばす先に
「花乃」


振り向かない。


「花乃」


何で、どうして。



「花乃!!」


「祈…」


届いた。


が、花乃は振り向かない。


「何で、私を置いて行ったの」


置いて行ってなんかいない。
ここにいる。


「祈だけが私を分かってくれたのに。私は祈だけを想ってたのに」

どうして過去形なんだ。
今も花乃を理解したいし、想ってるよ。


「もう、三年だよ」

三年?


「祈がいなくなって、三年経ったのに。迎えに来てくれないなんて、本当に意地悪」

何を言っているんだ。
そんな誰かも知らない墓の前で。

「会ったのは一年なのに、もう四年生も終わっちゃうよ。祈との一年間が私の宝物」

でもね、と花乃の涙声が鼓膜に響く。


「やっぱり、いないのは寂しいよ………」

会えないの。もう遠すぎて。

雲より遠くに行っちゃって。

ねぇ祈、そこにいる?私はまだ、祈の中にいる?

どうして。どうして。
祈、祈。

大好きだよ、それなのに会えないっておかしいよ。

迎えに来てよ、会いたいよ。

私だけ残していかないでよ、バカ。




滝のように溢れる言葉の一つ一つが刺さるようだった。

おかしい。

ここに、いる、はずなのに───。

ふと手元を見る。

携帯が握られたままだ。

僕の記憶では新品なはずの携帯が、ボロボロになっていた。

画面が割れている。

もうきっと点くことはないと分かるほどの壊れようで。



「祈」


頼むから、そんな声で僕を呼ばないで。


涙を流さないで。




僕はもう、







君に触れることはできないから。


















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