From..
「あの…紫音のご両親とおじいちゃんからも声をかけてあげて下さい」

その言葉に両親は頷き、紫音に声を投げかけた。

「紫音…」

「お母さん…お父さん…ごめんね…?私…」

「紫音…何で謝る?」

「だって…私…何も親孝行できなくて…」

「紫音って言う名前は…紫陽花(アジサイ)が由来なんだ」

「…お父さん…?」

「お前が産まれて来た時お前は、『おぎゃあおぎゃあ』と泣くことを止めなかった。だがな、ほんの少したったら急に笑い始めたんだ。そうだよな母さん?」

「そうよ…。だから…表情がコロコロ変わるから“七変化”とも呼ばれる紫陽花の花から一文字とったのよ…」

「…“音”は?」

「紫音が幸せの音を俺達に聞かせてくれたんだ。『おぎゃあおぎゃあ』ってな…」

「お父さん…」

「産まれて来てくれてありがとう」

紫音のお父さんとお母さんはそういって紫音を代わる代わる抱きしめた。

「…お父さん!お母さん……!!」

「親孝行出来なくてごめんだと…?俺達はな、ただ紫音が笑っていてくれるだけで力が沸いたんだ」

「私…お母さんとお父さんの子供でよかった…」

紫音のその言葉はお父さんとお母さんの心に強く残るだろう。

いや…絶対に…残る。

俺はそう信じてる。
< 244 / 387 >

この作品をシェア

pagetop