HE IS A PET.
出かけ際、昨日一度も覗いていなかったマンションの集合ポストに立ち寄った。
ダイヤルロックを回し、銀色の扉を開くと、DM二枚と小さな箱が一つ入っていた。
宛名書きのない青い化粧箱には、有名なスワンマークがついている。スワロフスキーだ。
何でこんなものが?
そろそろと開けてみて、目を見開いた。
か、可愛い!
ころんとしたフォルムのちっちゃなテディベアが、クリスマスツリーを胸に抱えている。
まぁるい感じと柔らかいクリスタルの輝きに、ふわりと心が癒される。
これ、私に? 誰がポストに?
もしかして……
「ごめん、それ……俺じゃない」
怜の困惑した声色が耳に届いた。
「クリスマスプレゼントとか、気が利かなくて、ごめん」
心苦しそうに言われて、いたたまれない。勘違いした私が間抜けなだけなのに。
怜じゃないなら……守田さん……も違うか。
守田さんにはマンションの場所教えてないし。
お台場のマーケットに一緒に行った時、クリスマスプレゼントだといって小物を買ってくれたし。
「じゃあ、誰かが他のポストと入れ間違ったのかも。ごめんね、変なこと訊いて。怜からプレゼント貰いたいなんて、思わないから。怜じゃなくて良かったよ」
何これ、嫌な言い方。
電話口の向こう、怜がしゅんとするのが分かった。
「咲希さん、昨日はほんとにごめ……」
「いーよ、全然。アズミンもう大丈夫?」
怜に謝られる度、惨めな気分になる。謝罪なんて望んでいない。