HE IS A PET.


 なかなかハードなカミウングアウトを、コンビニの立ち話でしちゃうとは、さすが脩吾だ。甘く見てはいけない。


「じゃあ、何で付き合ってたの」

「んーと、楽だったから」

「じゃあ何で別れたの」

「んーと、しんどくなったから?」

「シュウって、ほんっと……」

「バカって言いたいんだろ、わぁーってるよ」

 ぶーたれて唇を尖らせる。

 歳いくつだよと思うけれど、サラサラの栗毛とキラキラした大きな瞳は、天使みたいに清らかだ。

 第一シュウに悪意はなくて、逆に好意しか感じないのだからどうにも憎めない。昔からそうだ。


「シュウ。奥さんと生まれてくる子供、ちゃんと幸せにしてあげなよ」


「あったりまえじゃん。任してよ」

 笑顔でピースサインを作る脩吾にバイバイして、軽く注目を集めていたコンビニを後にした。


 アズミンとの出会いは三年半前、シュウを通じてだった。

 大学在籍中に公認会計士の資格を取得できなかった私は、卒業後専門学校に入り直し猛勉強の日々で。
 馬鹿だけど頭のいいシュウは、賢い大学を出たあと、ニートをしていた。

 上京したての頃はわりと交流があったけれど、自然と疎遠になって久しいある日、シュウからライヴを見に来ないかと誘われた。

 聞けば、趣味のバンド活動に明け暮れてるらしい。
 気晴らし気分で見に行ったら、無茶ぶりでステージに上げられた。

 押しに弱い自分の性格を呪ったけれど、何だかんだでライヴはハチャメチャに楽しくて、それを機にメンバー入り。

 ステージで馬鹿するためだけに活動しているようなバンドだったから、楽しかった。
 最高のストレス解消だった。


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