HE IS A PET.



 東京に戻った日の夜、怜から連絡があった。
 週末に会いたいと言う。温泉旅行のお土産をくれるらしい。

 シュウに再会してからというもの、シュウとアズミンのこと、アズミンと怜のこと、怜と私のことをぐるぐる考えては堂々巡りで、その不毛さに嫌気が差していたところだった。

 私は、怜のことが好きだ。
 怜も私のことを好きで、アズミンのことも好きだ。

 それは『二股』とか『浮気』とかいう次元ではない。
 怜はペットだから、飼い主に愛されて当然で、ペットだから恋人ではない。

 ペットには自由が与えられていて、恋愛するのも交尾するのも好きにしていいらしい。


『だって、恋愛はいつか終わっちゃうじゃん』

 私とはずっと友達がいいと言ったシュウの言葉を思い出す。

 恋が長続きしないシュウの理屈によると、『恋人になって別れるより、友達としていられる方がいい』のだそうだ。

 シュウと恋人になって別れたアズミンも、もしかしてそう思ったのかもしれない。
 恋人になったから、関係が終わった。違う形でいたなら、続けていけたのにと。


 だから、怜はペットなのかもしれない。

 それぞれに恋人ができようが、二人の関係は変わらない。飼い主とペットだ。

『ずっと変わらない関係で一緒にいる』ことだけを望んで、アズミンが怜を飼っているのだとしたら。


 私は何を望もう。私は、怜の何でいたいんだろう。

 恋人、友達、相談相手、枕友達……飼い主?
 どれにも当てはまらない。

 全てになれたらいいのに。




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