HE IS A PET.


 エレベーターの扉が開き、無言で下りた私に怜が続く。
 チェックインの済んでいる部屋をカードキーで開錠し、中に入った。

 後に続いて部屋に入った怜は、俯き加減に立ち尽くしたままだ。

 その表情の悲痛さに、苛めすぎたかもしれないと気づく。


 身売りみたいにあちこちに貸し出される可哀想なペットは、傷つきながらも、飼い主の顔を潰さぬようにと健気に踏ん張っている。

 アズミンに何でも勝手に決められて、犠牲を払っているのは怜なのに、私に謝るの、いい加減にやめてほしい。



「……ごめん、怜……もう帰って」


「え……咲希さんは?」


「私は、少し頭冷やしてから帰るから」


「お酒、飲んでないよね……熱っぽいの?」


 的外れな心配をして、歩み寄ってきた怜の手のひらが額に触れる。

 冷まそうとした気持ちが、さらに熱を帯びてしまう。


「熱は……ないかな。気分は?」

 手で触れたまま、心配そうに覗き込む瞳が間近すぎて心臓に悪い。


「これ、火に油」

 怜の手首を掴んで、額から外した。


「えっ何が、火に油?」




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