HE IS A PET.


「それに悪いけど、あたしは顔も知んないチトセ妹より、怜の方が大事よ。チトセが病床に伏しててもうすぐ死にそうだなんて、怜に教えてどうなると思うの? 怜のことだから、泣いて駆けつけて、尽くして、また置いてかれるのよ。今度は永遠に」


 そうしたら、あの子また壊れちゃうじゃない。

 そう呟いた声の仄暗さに、どきりとして目が合えば、アズミンは薄く微笑んだ。


「まあ、いいわよー。咲希がどーしても、怜をいたぶりたかったら。それで壊れても、あたしはあの子を捨てないから」

 強い響きが胸を打つ。

「なんて顔してんのよぉー。咲希、大好きよ」

 いつもの口調に戻ったアズミンは、んふふと笑って、店員を呼ぶためのコールボタンを押した。


「ねえ、やっぱりお酒飲んでもいーい?」

 珍しく飲みたいと言うと、なぜか私にお伺いを立てる。

「いーよ。どうせタクシーで帰るんでしょ」

「えー、送ってくれないのぉ?」

「私が?」

「どちみち、あたしんち通る方向でしょ。ついでに送ってくれてもいいじゃない。何か問題ある?」

 
 ある、大有り。

 と答えて理由を訊かれるよりは、黙って送っていった方が面倒臭くなさそうだ。

 マンション前で下ろせば、何の問題もないわけだし。

「いーよ、送ってく。気兼ねなく飲んで」


< 182 / 413 >

この作品をシェア

pagetop