HE IS A PET.
その後の事情は、アズミンから聞いたことがある。
チトセに捨てられて、やさぐれていた怜を偶然保護したのが、アズミンだ。
不登校になり、家出しては保護されるを繰り返していた息子を持て余していた怜の両親は、
「自分が責任を持って必ず高校を卒業させるし、生活も更生させる」
と誓いを立てた見知らぬ青年実業家に、怜を丸投げしたらしい。
その時のアズミンは、高級イタリアンスーツに身を包み、男言葉を喋り、良識ある社長然とした態度で交渉に臨んだというから、完全に詐欺だと思う。
そう言うと、アズミンはんふふと笑って
「結果オーライなんだから、いーんじゃない?」
と悪びれずに言った。
確かに、結果はオーライなのかもしれない。
アズミンの保護下で怜は高校に復学して、無事に卒業したようだし。早寝早起きの規則正しい生活を送っている。
うちにいた時も夜遊びはおろか、学校から直帰でうちにいる日が多かった。
「アズミが言ったんだ。もしもなんて、意味のないことを考えるのはやめろって。もう何も考えなくていいいんだって」
そう言って、怜は弱々しく顔を上げた。
その瞳は全てを諦めたように穏やかで、淋しげだ。