HE IS A PET.
「警察には届けてねーよ」
そう聞いてほっとする暇はなかった。続けて告げられた言葉に凍りついた。
「身内の恥を、サツに届けるヤクザがいると思うか? アイツを追ってんのは、警察じゃねーよ。翠幸会っつう団体だ」
……スイコウ会?
「翠幸会の故三代目会長、行成平(ゆきなりたいら)は、悠里のひい祖父さんだ。悠里の母親は堅気と結婚したが、離婚したからよ。悠里の墓は、行成家の墓地に建てた。三代目の墓と行成家代々の墓が、悠里の墓と同じ敷地内にある。身内の墓が荒らされて、会が黙ってるはずがねえだろ」
混乱する。行成家だの三代目だの、会だのと言われても、そんな組織図に馴染みも興味もない。
ヤクザが怜を追っている。
そう知って、それ以上のことなんか耳に入ってこない。どくどくどくと、自分の心臓がうるさい。膨れ上がってくる不安に胸が破れそうだ。
冷静なチトセを見つめて、思った。
ああ、そうか。チトセもヤクザの端くれだ。いや、端くれなんかじゃない。
悠里が三代目会長の曾孫だと言うなら、チトセも同じだ。スイコウ会が世襲制なら、チトセは……
「……六代目?」