HE IS A PET.
常に怒ってるようなチトセだけど、ことさら魔女の話になると機嫌が悪くなる気がする。
「もしかしてチトセって、魔女のこと好きなの?」
つい訊いてしまって、チトセの逆鱗に触れた。
「はぁ!? てめえ、ふざけんなよ! 誰があんなババアと、好きでヤるか」
ムキになるとこが、余計怪しい。てか質問の答えが微妙にズレてる気が。
「つか、チトセって呼ぶな」
「え?」
「チトセって呼ぶなっつってんだよ」
チトセとはやっぱり仲良くなれそうにない。
チトセが出て行き、魔女の寝室に一人残された。
緑でカラーコーディネートされた部屋は、日曜に訪れた時と変わらず、モデルルームのように整っている。
窓際に置かれた大きな鉢植えの観葉植物に目をやって、気持ちを整える。
チトセにわきまえろと言われた、人質としての立場を考えてみる。
人質としては、ここから逃げることを考えるべきなのかな。
貴重品は取り上げられたけれど、体は自由だし部屋に鍵もかかっていない。
チトセの隙を上手く突けば、ここから飛び出ることは可能だろう。
でもその後が問題だ。
追いかけて来られたら、脚力に自信はないし。逃げ切れたとこで、自宅には帰れない。