HE IS A PET.


 私の実家を調べ上げて拉致りに来たチトセは、当然のように自宅マンションも、勤務先も知っていた。

 明日出社する予定だった会社には、事故のムチ打ち症状が出たため、もう少し休ませますと、母親もどきの誰かが連絡を入れてくれたらしい。

 必要とあらば、病院の診断書も手配できるらしい。手の込んだズル休みだ。

 今週のスケジュールが頭によぎる。
 フォローは長尾さんと野上くんがしてくれるだろうけれど、気にかかる。

 だけど、もっと気になるのは怜のことだ。仕事をしていたとしても、きっと上の空だろう。

 チトセが怜を見つけてくれるのなら、それをここで待ちたい気持ちもある。
 チトセが怜に手荒な真似をしないように、微力でも抑止力になりたい。

 そう決意して、今さらながら緊張感に包まれる。



 時間が経ち、扉の外が気になって、そっと寝室を出た。

 魔女のマンションの間取りは、寝室が一番奥で、廊下を挟んでバスルームとトイレがある。
 廊下沿いには収納部屋と書斎があって、廊下を抜けるとダイニングリビングだ。

 そこまでたどり着いて、静かにスライドドアを引くと、ソファーに深く沈んで足を伸ばし、目を瞑っているチトセが目に入った。






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