HE IS A PET.


 え……寝てる?

 恐る恐る近づいて、そうっと覗き込むと、ぱちっと両眼が開いた。

 私を鋭く見て、嫌そうに言った。

「何か用か」

「用っていうか……寝てたら、逃げちゃうけどいいの?」

 瞬きをしてまた目を閉じて、チトセはだるそうに答えた。

「良くはねーな。また捕まえんの、手間だろ。ここにいろよ」


 選択する自由があるなんて、困った。

 逃げてまた捕まるか、ここにいるか。

 逃げて、助けを求める?
 助けを――――誰に?


 沈黙を同意とみなしたのか、チトセも黙ったままだった。

 そして、鳴り出したのは私のスマホだ。
 チトセは腰を浮かせてポケットからそれを取り出し、画面をタップして、渡してきた。

 え、出ろってこと?

「もしもしぃ、サキちゃん?」

 げっ、脩吾。
 てか、これスピーカー通話になってんじゃん! 会話ダダ漏れになりますよ。


「もっしぃーサキちゃん? 大丈夫?」

「あ、うん、いや、あんまり、大丈夫じゃないけど」

「あ、今まずい?」

 チトセの方を伺うと、ギロリと睨まれた。





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