HE IS A PET.
突き刺さるような、チトセの視線が痛い。
脩吾のバカ。俺も愛してるだなんて、相思相愛みたいに言いやがって。
「あんた……」
険しい顔のチトセが、多分厳しいことを言おうとしたとき、手の中のスマホが再び鳴り出した。
脩吾がかけ直してきたのかと思ったら、違った。
画面を見つめて固まっていると、スマホを奪われ、スピーカー通話にしてまた渡された。
睨んだら、睨み返された。
畜生、人質にプライバシーはないのか。
「もしもし?」
「あ、はい倉橋です」
「大丈夫? 倉橋さん。事故したって聞いて」
心配そうな、だけど穏やかな声で守田さんが尋ねた。
「怪我は?」
「怪我は全然、大丈夫です。私が事故したって、誰から」
「田中先生に聞いた。特許申請の件で、問い合わせの電話したときに。具合、本当に大丈夫? いま自宅?」
仕事は「むち打ち」を理由に休んでいる。ここは辻褄を合わせよう。
「実家です。こっち帰ってて、事故っちゃって。休みもらったんですけど、そんなに大したことないですから。心配かけて、すみません」
胸が痛む。
嘘ついてズル休みして、みんなに迷惑かけて、心配かけて、最悪だ。