HE IS A PET.


 脩吾の、多分五百倍は空気を読める能力のある守田さんは、突拍子のないことを言い出すこともなく、無難に会話は流れた。

 だから逆に、こっちが引っ掛かる。

『結婚を前提に付き合ってほしい』

 あの一世一代のような告白の、返事を保留にしたままなのに。
 まるで何も聞かなかったように、一切それに触れないというのも、さすがに白々しいだろう。

「あの……」

 でも何て言おう。チトセが息を詰めて、私の発言を見守っている。


 脩吾の、多分五百倍は空気の読める守田さんは、私の言いたいことを察したようだ。

「ああ、告白の返事は、倉橋さんのタイミングでしてくれたらいいから。ゆっくり静養して、無理しないようにね」

 ありがとうございますと言って電話を切り、チトセと目を合わせた。

 人質としては、グッジョブな電話応対だったはず。そんなに睨まないでほしい。


「あんた、見かけによらずタラシなんだな」

 タラシ?

「怜とさっきのヤツと、今のヤツと。三股かよ、スゲーな」

「違っ……、私は」

 誰もタラシこんでなんかいない、はず。
 だけど、三人と中途半端な関係であることは、否定できない。

「正当化すんなって。ムカつく」

 そう言って、チトセは手のひらを私に向けた。
 スマホを返せってことだろう。てか本来は私の物だけど。

 不服ながらもスマホを差し出すと、手首ごと掴まれた。


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