HE IS A PET.


「千歳のイロだぁ?」

 グラサンが、グラサンを外して私を見た。

 予想外につぶらな瞳に見つめられて、何だか気恥ずかしい。
 てかポマード、早く手え退けて。肩までベタついてきそうじゃん。

「あのガキは、女連れ歩いてチャラチャラ仕事してんのか。幹部候補がそんなんじゃあ、他のモンに示しがつかねえなあ」

「会費払えばいいってもんじゃねえだろうが、なぁ梶谷。上への礼節ってもんは大事にしてもらわねえとなぁ」

 何なのマジで、この二人。ネチネチと言いがかりつけて、後輩イジメ? 
 いい歳した大人が見苦しい。

「はい、そらぁもうーそうっすよ。久米さん、有馬さんあっての俺らっすから。チトセはほら、妹の墓が荒らされたじゃあないすか。あれ、チトセの幹部入りに対する嫌がらせっすよね、多分。それで身辺警戒して、この娘そばに置いてんすよ、多分」

「多分多分って、おめえ憶測だけで物言ってんじゃねえぞ」

「女の身を案じて、連れ歩いてるってかぁ。色男はやることもカッコいいねえ。なあ、オネーチャン」

「そういやぁ、墓荒らしの件。千歳に一任されたらしいじゃねえか」

「自分一人でケリつけるって言い張ったんだってなぁ。会長に頭下げたって聞いたぜ。ガキがどうオトシマエつけんのか、見物じゃねえか」

 頭の横で飛び交う会話は、知っているようで知らない話だ。
 チトセの妹―――悠里のお墓が荒らされて、遺骨が盗まれたことは知っている。

 だけど、それは怜の仕業だと思われてるんじゃなかったの?
 翠幸会の中で、チトセは誰かと揉めているんだろうか。

 誰かっていうか。この二人からして、チトセを快く思ってなさそうだけど。

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