HE IS A PET.
「何笑ってやがる」
「上に向かって? おもしれえこと言うじゃねえかと思ってよ。どっちが上だよっつう話だろ。歳の話か?」
有馬の顔色がさっと変わった。
千歳の幹部入りに対する嫌がらせがどうのと、さっき梶が言っていた。
もしかして、チトセの方がお偉いさん?
「いつまでも先輩面して、頭わりぃにも程があんだろ。便所くせえ手で触んなよ。俺の大事なもんにも。二度と触んじゃねえぞ」
有馬の手を振り払い、その胸倉を掴み返すと、チトセは恐ろしくドスのきいた声で言った。
有馬と久米が去って、ほっと一息……つけるかと思ったら、甘かった。
チトセの怒りは収まらず、その矛先は梶に向けられた。
「梶てめえ、何で死ぬ気で抵抗しねえんだよ。綺麗なツラしたまま、心売るような真似しやがって。ふざけんな、そんなに俺が信用できねえのか」
「やめて。梶は私を庇って……あんなこと、私が、」
自分の身可愛さに、梶に犠牲を強いたんだ。
もしもチトセが帰って来なかったら、私は自分の狡さを、弱さとして寛容していた。
「そんな大袈裟なん、やめてや二人とも」
梶が息を吐いた。
「俺、ウリやっとったんやで。もう売り尽くして空っぽなんやから。尺八くらい、どんなんでも無の境地で吹けんで? 芸は身を助く言うやん」