HE IS A PET.


 酔いが一気に醒めたらしく、リーマン二人組は姿勢を正して、梶にペコペコ頭を下げた。

「すみません」
「すみません、これで勘弁して下さい」

 一人がおぼつかない手つきで、財布から一万札を取り出した。

「嫌やなぁ。そんなんされたら、俺がカツアゲしとるみたいやん。まあ、慰謝料としてもろうとくわ」

 梶が万札を受け取ると、男たちは逃げるようにして雑踏に消えた。
 それを見送る梶を見ていたら、

「強きに媚びて、弱きを挫く。正しい人間社会やろ」

 私に視線を戻した梶が笑った。

「俺かて、一般人には強いんやで。見直した?」

 自嘲的な笑みがすっと消える。

「冗談や。見損なったやろ。つーかさぁ、俺追いかけて来て絡まれるとか、マジでやめてくれへん? チトセにまた怒られるん、かなわんわぁ」

「……ごめん。事務所で助けてもらったお礼、言ってなかったから、言いたくて……」

 でも、言いづらくなってしまった。
 サラリーマンが払った一万札を見咎める私に、梶が苦笑する。

「こんなんで心痛めとったら、ヤクザの女なんて務まらへんのちゃう。チトセやもっと悪どいことして稼いどんやから」

 梶は淡々と事実を述べて、

「ほんま意外やわ。チトセの彼女が、咲希ちゃんみたいな子やなんて」

 と言った。


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