HE IS A PET.


「そんなこと、絶対させない」

 させてたまるか。

「何の権限で、そんなこと言えんだよ?」

「そっちこそ何の権限があって、そんな勝手なこと言えるわけ? 怜が犯人だって決め付けて、話進めるのやめて」

 怜は犯人じゃない。
 何度言っても聞く耳を持たないチトセに、ひたすら不安が募る。

「怜が犯人じゃないって分かったら、無罪放免してくれるんでしょ?」

「アイツがやったんだよ。そのオトシマエはきっちりつけてもらう」

「だから、怜はやってないって」

「あんたが庇おうが、怜本人が否認しようが、そんなもんは関係ねえ。誰にどうオトシマエをつけさせるかは、俺が決める」

 言い切られて、びっくりした。
 あまりに横暴、あまりに理不尽。はい、そうですかと納得出来るわけがない。

「それって冤罪じゃない。無実の人間に罪を着せて、無理矢理償わせるなんて、そんなの絶対間違ってる。意味が分かんない」

「はっ、極道相手に正論がまかり通ると思ってる方が間違ってんだろ。会に下手を打った奴は、ただじゃおかねえ。そう周りに知らしめるためには、見せしめが必要だろ。会の看板を安くするわけにはいかねえからな」

 見せしめのために?
 組織の幹部としては正論なんだろうけれど。

「だけど……本当の犯人を見つけない限り、悠里の遺骨戻らないじゃない。盗んでない相手に返せって言っても、返しようがないんだよ。それでいいの?」

 悠里の兄としての、チトセに問いかけた。

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