HE IS A PET.


「うぜえなあ、あんた。マジでむかつく。何の犠牲も払わねえ人間ほど、偉そうに抜かしやがる」

 腹立たしげにそう吐き捨てると、チトセは唇の端を歪めた。

「違うっつうならよ、怜の代わりにあんたが払ってくれんのかよ。五千万」

「五千万!? 何、五千万って」

 そんな大金、持ってない。怜だって払えるはずがない。

「あいつが身体で稼いで、弁済する予定になってる賠償金だ。何本かえぐいの撮って売りゃあ、完済できんだろ」

「五千万って、そんな滅茶苦茶な金額」

「悠里の遺骨が戻らなくても、示談にしてやるっつってんだ。五千万なんて安いもんだろ。あんたが代わりに払ってくれんなら、店で雇ってやるよ。怜ほど稼げそうにねーけど」

 わわわ、超むかつく。

「自分の女に身体売らせるほど腐ってねえんじゃなかったの?」

「恋人ごっこは、もう終いだ。咲希、別れよう」

 おもむろに取り出した新しい煙草に火を点けて、チトセは吸い込んだ煙を大きく吐き出した。


「そんなにがっかりした顔すんなよ」

「してない」

 ポカンとした顔しただけだ。チトセの言動、自由すぎてついてけない。

「解放してやるっつってんだよ、喜べ。犬の身代わりになるっつうんなら、飼ってやってもいいけどな」

 どんだけ上から?
 雲の上から話しかけられてんのか、遠すぎてよく聞こえない気がする。


< 278 / 413 >

この作品をシェア

pagetop