HE IS A PET.
「うぜえなあ、あんた。マジでむかつく。何の犠牲も払わねえ人間ほど、偉そうに抜かしやがる」
腹立たしげにそう吐き捨てると、チトセは唇の端を歪めた。
「違うっつうならよ、怜の代わりにあんたが払ってくれんのかよ。五千万」
「五千万!? 何、五千万って」
そんな大金、持ってない。怜だって払えるはずがない。
「あいつが身体で稼いで、弁済する予定になってる賠償金だ。何本かえぐいの撮って売りゃあ、完済できんだろ」
「五千万って、そんな滅茶苦茶な金額」
「悠里の遺骨が戻らなくても、示談にしてやるっつってんだ。五千万なんて安いもんだろ。あんたが代わりに払ってくれんなら、店で雇ってやるよ。怜ほど稼げそうにねーけど」
わわわ、超むかつく。
「自分の女に身体売らせるほど腐ってねえんじゃなかったの?」
「恋人ごっこは、もう終いだ。咲希、別れよう」
おもむろに取り出した新しい煙草に火を点けて、チトセは吸い込んだ煙を大きく吐き出した。
「そんなにがっかりした顔すんなよ」
「してない」
ポカンとした顔しただけだ。チトセの言動、自由すぎてついてけない。
「解放してやるっつってんだよ、喜べ。犬の身代わりになるっつうんなら、飼ってやってもいいけどな」
どんだけ上から?
雲の上から話しかけられてんのか、遠すぎてよく聞こえない気がする。