HE IS A PET.
「おい、聞いてんのかよ」
「あ、うん。ごめん。悪いけど、チトセの計画には乗れない。私も怜も、チトセの思い通りにはならないよ」
これは宣戦布告だ。
「じゃあ帰るね。バイバイ、敦司」
ソファーから立った私を、チトセが鋭く引き留めた。
「待てよ。もうじき迎えが来る」
「迎え?」
「安住が来る」
アズミンが?
私をダシにして、呼びつけたんだろうか。そういえば私は人質だった。
「来なくていいよ、一人で帰れる」
「歩いてか?」
呆れたように私を見上げる、チトセの言いたいことに気づく。
「財布と電話、てかバッグごと返して」
無視ですか。はい、そうですか。
「歩いて帰る」
再び応接室のドアノブに手をかけると、さっきよりも怖い声色で呼び止められた。
「待てっつってんだろ。人通りが減って、いろんなもんに酔った馬鹿がふらふらしてるこの時間帯が、一番危ねえんだ。あんたみてえな危機感ゼロの女、歩かせられるかよ」
「店で働けとか言うくせに、身を案じてくれるわけ? チトセってほんと訳分かんない。心配してくれるんなら、荷物返してよ」