HE IS A PET.
「電話なら俺の貸してやる。安住が来るまで退屈なら、動画でも見てろよ」
差し出されたチトセのスマホに、目が点になる。
そうそう動画。見たかったんだよね~って、何でやねん!
「犬の秘蔵映像、興味あんだろ?」
犬って……まさか
「怜の?」
秘蔵映像?
もしかして、悠里が撮ってチトセに見せてたっていう……
「今、エロいの期待しただろ」
からかうようにチトセが笑った。
「残念だな。怜のエロ動画はもう残ってねえよ。別れたときに、悠里が全部消去した。そんなにガッカリした顔すんな」
「してない」
怜の全てを晒け出した映像は、もうこの世に存在しない。そのことにほっとした。
怜の全てを晒け出した相手は、もうこの世に存在しない。そのことに胸が痛くなった。
私は怜の、全てどころかきっと半分も知らなかった。
チトセが再生し始めた動画には、怜が映っている。
それは三十秒程度の動画だった。
俯き加減の怜が顔を上げると、その輪郭がわずかに腫れているのが分かった。
カメラを捉え、震えるように動いた唇から、掠れた声が発せられる。
「……アズミ」