HE IS A PET.
「チトセがいるから、顔出せないよ」
「じゃあ、二階。俺んちやから」
「梶、ここに住んでんの?」
そういや、今から帰って寝るところだって言ったっけ。
「ん。おらへん方が多いけど、もし近く来たらピンポン鳴らしてや」
「うん、分かった」
私は狡い大人だな。
果す可能性の低い社交辞令を、どう受け取ったかは分からないけれど、
「ありがとう、嬉しいわ。そや、外で待っとるタク、咲希ちゃん待ちちゃうん? 引き留めてしもうて、ごめんなあ」
梶は大人びた気遣いを返して、
「ほな、またな」
と笑った。
ビルを出ると、路肩にタクシーが停まっているのが見えた。
近付くと後部座席のドアが開き、乗り込もうとしたとき、背後から声をかけられた。
「倉橋さん、おはようございます」
振り向くと、お久しぶりな
「真崎さん、おはようございます。どうしたんですか? こんなとこで」
如何わしい看板が目立つ歓楽街。
私こそ、何してんだって感じだけど。
「ここからどこか移動して、少しお話できませんか? 安住のことで、ご相談したいことが」
ドキリとした。