HE IS A PET.
「謝る必要はないと言っただろう。だが、ここに来るのは今日で最後にしろ。安住さんと芦沢くんにも、そうお願いした」

「どうしてですか」

 怜にとってここは、最愛の人が眠る場所だ。来ちゃ駄目だなんて。

「行成さん、仰いましたよね。ご家庭の事情で、ずっとお父様のお墓参りに来られなかったって。そのことで辛い想いをされたんですよね。だったら、」

「倉橋さん、まさか忘れてはいないだろうね。我々は金輪際、君たちと関わらない。そう約束したね。こちらが約束を守るには、そちらにも守って貰わないといけない。分かるね、当然の道理だ」

 諭すように粛々と言葉が続けられる。

「千歳兄妹は父の曾孫だが、行成家とは無縁の世界で生まれ育ったからね。無縁のままだったなら、僕が関与する話ではないが。妹が病気になり、千歳は義理の伯父である現会長を頼ってきた。今では会の幹部だ。妹は亡くなり、墓は行成家の墓地に建った。僕と同じく、行成の身内連中から好かれてはいないが、身内だ」

 悠里も新が言うところの『我々』側の人間だから、お墓参りに来ちゃいけないって?

「そんなこと、怜……芦沢くんには関係ありません。悠里さんの幼馴染みで、恋人だったんです。お墓参りくらい、許して頂けませんか」

「本人は了承してくれたよ。道理の分かる、素直ないい子だ。彼のことが好きなら、千歳との縁はきっぱり切らすべきだと思うがね。いいか、墓に参るだけが供養じゃない。どこにいようが、いつだろうが、自由に出来るものだ」

 ここで、と言って、新は自分の左胸の上に手を当てた。

「父は、僕のここにいる。いつでも会える」

 ああ、そうだ。悠里も、怜の胸の中にいる。永遠に。


< 390 / 413 >

この作品をシェア

pagetop