HE IS A PET.



 九月に入り、怜から電話があった。

 とっくにこっちに戻っていたくせに、わざわざ平日の真っ只中、水曜夕方に連絡してくる意味が分からない。

 なんてイラついてみたところで、胸の鼓動の正直さには勝てない。
 スマホのディスプレイに表示された名前を見て、どきりとした。

 馬鹿みたいに緊張しながら電話に出た。


「はい、倉橋です」

「あ……咲希さん? いま大丈夫?」


「うん。お帰り、怜」

 駄目だ。声を聴いたら、会いたくなる。

「ただいま」

 と答えて少し黙った後、怜が言った。

「咲希さん、今日会える? 会って、話したい」

 ストレートな言葉に、胸が締め付けられる。

「仕事終わってからなら。遅くなるよ?」

 平静を保って答えると、

「ありがとう。遅くなっても大丈夫、待ってる」

 嬉しそうな声が返ってくる。

 この遅すぎる連絡を、待ち焦がれていたのは私の方なのに。



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