プリマネ!恋はいつでも真っ向勝負
試合に興味なさげに本を見ている名ばかり顧問、スコアブックを書いているあたしの後ろで手を組んでうつむいているみのるを含めて、誰もがあきらめていたと思う。


彼らの話が聞こえたのか、ふいにネクストボックスでしゃがんでいた四番の敦士が、そんなお通夜モードのベンチを振り返った。


「お前らの言う通りだ、ここにいるやつら誰一人甲子園行けるなんて信じてねーよ。
俺だって、そんなこと思ってねー」


試合始まる前から試合中も、誰とも話さずに無言で投げ続けた敦士が初めて発した言葉。

けれど、言葉とは裏腹に勝負を捨てた男とは思えないような目をしていた。


「だけどな、あそこにいるあのバカだけは、信じてんだよ。こんな状況でも、まだ信じてんだ。

......さっき俺、満塁ホームラン打たれただろ。
そんときあいつ......、ナイスボール!って俺の肩叩いたんだよ。たまたま打たれたけど、だんだん調子上がってきたから、まだ勝負は分からないってさ。
俺打たれてんのにさ、マジあいつ頭おかしいだろ.......」


敦士はゆっくりと立ち上がり、バッターボックスでファウルでつないでいる一輝くんをバットで指した。


「甲子園行けるなんて信じられねーのは当たり前だ。
だけど、あのバカだけは信じてやれよ。

お前ら一輝の友達なら、あいつに力を貸してやってくれ。最後まで勝負捨てんな」


誰も敦士に返事を返さずにいると、いつのまにか一輝くんが二塁まで進んでいた。


「敦士くん、がんばって!」


一輝くんがヒットを打ったというのに、いまだ時が止まったかのように静まりかえったベンチの静寂を、スタンド席にいる理穂の声がやぶった。

あたし以外の部員とはほとんどしゃべらない、あのおとなしい理穂が。理穂......。


「打たれた分、取り返ししてくるわ」


敦士は三塁側応援席を見上げて、理穂に手を上げる。


それから、あたしたちに背を向け、バッターボックスに入っていった。


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