シュールな関係
「心配するな 

ほら、姿勢を正して歩け。

一緒に行くって言いだしたの奈緒だろ」


「だってそれは社長に―――」
 

「熱もねぇのに…足元がふら付いてるぞ? 

こけるなよっ!」


ワザとプレッシャーを掛け、わたしをからかう。


「体重を腕にかけて歩け。

安定するから」


一之瀬さんに腕を組みながら緊張して歩く。



今の私には一息つく余裕すらない。




普段は7センチまでのヒールなのに

今は12センチのヒールを履いている。


いくら高級なヒールでも安定感も

違和感も半端じゃなくって上手く歩けやしない。


本当に…どうしてここにいるんだろう。

自分の知らない世界を見渡しながらため息をもらす。


歩く度に一之瀬さんは声を掛けられ足を止める。

彼はあまりパーティの出席はしないらしい。


周りからは山ノ手クループの御曹司と

一緒に来ているのは誰?と囁かれて 

物珍しそうに、そして敵対視されるかのような

冷ややかな視線を浴びているのを感じる。



本当は今朝にでも家に帰るつもりだったのに…。





一之瀬さんも『ゆっくりしろ もう、行かなくていい』

って言ってくれたのに・・・



わたしも『彼女役をやめる! 天変地異が起きようと

祟られようと行きません!!』

って数日前に思いっきり啖呵を切ったばかりなのに・・・




まさか自分の意志で

今、このパーティに出席してるなんて…

人生ってほんと予測外の事がいつ起きるか分からないのよね



どうして来てるのかって?



それは今朝にさかのぼる。

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