鬼系上司は甘えたがり。
この点についても、私についてはわりと頭ごなしなところがある主任と大きく違う。
あの人、公私共に私には一切遠慮がないのだ。
「積もりそうですかねぇ……」
また主任と奥平さんを無意識に比較してしまっていたことにハッとし、今度は彼に気づかれないように煩悩を振り払い訊ねてみる。
窓の外の雪は、こうして雪の豆知識をご教授頂いていた間にも僅かながら強まりを見せているようで、運転に自信がない私は、本格的に降り始めてしまったらまた一人孤独にワーキャー言いながら山を下りることになるだろう。
それは少し寂しい。
「それでしたら、雪が積もらないうちに会社にお戻りになったほうがよろしいかもしれませんね。渡瀬さん、すごく話しやすい雰囲気をお持ちなので、すっかり引き留めてしまって……」
「いえいえっ!なんだか催促してしまったみたいで、私のほうこそ申し訳ありません。お気遣いありがとうございます。今度はぜひ新田も連れて来ますので!またお話を聞かせて下さい」
「ふふ、お待ちしておりますね」
「はい!」
終始失礼だった私に嫌な顔一つせずに対応して下さった奥平さんに見送られ、ペコペコ頭を下げながらロビーを抜けて玄関に向かう。