鬼系上司は甘えたがり。
 
主任には、池畑さんから奥平さんへと担当が代わった旨を伝え、これからの『iroha』の誌面への掲載も以前と同様の仕様で進めていく方向で話が纏まった、という報告を上げれば、とりあえずは及第点を頂けるだろうと思う。

それよりも、気になるのは主任の方だ。

今頃、渋面を作って言っていた“厄介な案件”とやらの進捗具合はどうなっているのだろうか。

何か手伝えることがあるといいのだけど。

--と。


「すみません、渡瀬さん!」


ちょうど自動ドアをくぐろうかというタイミングで後ろから声をかけられ、振り向くと、なんと奥平さんが血相を変えて走ってくる。

何事かと思い、私も慌ててロビーに引き返していくと、少し息を弾ませた奥平さんは握っていた拳を開いて私にあるものを見せてきた。


「もしかしてこのチェーン、渡瀬さんが落としたものではございませんか? あなたが座っていたソファーの下に落ちているのを見つけて」

「え?」

「これ、ネックレスのチェーンですよね。急いでトップ部分を探したんですけど、見つからなくて。もしかして服の中に入っているのかもと思って、お帰りのところ申し訳ないと思いつつも、お声をかけさせて頂きました」

「……あれ!? あれっ!? ない!! なんで!?」
 
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