鬼系上司は甘えたがり。
 
ほんと、どこに行っちゃったんだろう。

チェーンが私が座っていたソファーの下に落ちていたのなら、トップもその近くに落ちている可能性が高いような気がしてくる。

だけど、会社を出たときは私の首元には確かにネックレスがあって、運転席に乗り込んだときに安全運転を祈ってぎゅっと握りしめた覚えがあるから、車の中か、あるいはやはり、ホテルの中や敷地内で落としてしまった可能性も考えなければならないように思う。


「すみません、奥平さん、服の中には紛れ込んでいませんでした……。車の中か、もしくはホテルの敷地内に落としてしまったみたいです」


私がお手洗いに駆け込んでいる間、奥平さんはソファーの周りを探して下さっていたようで、彼はピシッと着こなしていたスーツを脱ぎ捨て、ワイシャツ姿で床に手を付いていた。

声をかけると、その格好のまま私を見上げた奥平さんは、さらに神妙な顔つきをして「……大事なものなんですよね?」と確かめる。


「……はい、とても。個人的な理由で申し訳ないんですけど、あれに代わるものはありません」


俯き、自分の靴のつま先を見つめる。
 
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