鬼系上司は甘えたがり。
 
「私の私物のためにここまでして下さって本当にありがとうございました。落とすとしたら、一番可能性が高いのは車の中なんです。あとは私が探しますので、奥平さんはどうぞ体が冷えないうちに中に戻ってください。このお礼は必ず致します。ご厚意に深く感謝致します」

「ですが……」

「いいんです、正直に話してみます」

「……」


大きめの懐中電灯を手に持ち、今にも地面に這いつくばって探さんとしていた奥平さんは、私の諦めにも取れる台詞を聞いて、納得がいかない様子で、それの明かりを静かに消す。

代わるものはない、とは言ったけれど、仕事相手の方にこれ以上探して頂くわけにはいかないし、奥平さんだって自分の仕事もあるだろう。

私のために彼を拘束するわけにはいかない。


会社に戻ったらもう一度、車の中を隅々までよく探してみて、それで見つからなかったら、主任に正直に話して許しを請うてみよう。

奥平さんの様子だとホテルの中には落ちていなかったようだし、敷地内を探すといっても範囲は広く、さらにこの雪、加えてすっかり日が落ちて足元が見えずらいという悪循環。

残念だけど、まず見つからないだろうと思う。
 
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