鬼系上司は甘えたがり。
幸い休憩室の中には人はおらず、めいめいに飲み物を買って丸テーブルにつくと、一口ココアを飲んで小さく息をついた私は、由里子にずいっと顔を近づけ、小声で話しだした。
編集部に戻ってきた際には主任の姿はなく、まだ出先から戻っていないことはホワイトボードを見ても一目瞭然だった。けれど。
いつどこで誰に聞かれているか分からない。
一応まだ編集部内では主任と私の交際は伏せてあり、バレたらバレたで仕方がないと腹を括っている部分も多少はあるにせよ、用心には用心を重ねるに越したことはないと思われる。
「それ、早く主任に言ったほうがいいよ。故意じゃないんだし、失くしちゃったことを隠されてるほうが、主任だって嫌だと思う」
「そうだよね、うん、そうなんだよ」
由里子に言われ、深く頷く。
やっぱり由里子もそう言うだろうと思っていた。
逆の立場であっても、変に隠されるより正直に打ち明けてもらった方がずっといい。
でも、この話にはまだ続きがある。
「奥平さんっていう人が、池畑さんに代わって今度から『iroha』の担当になったんだけど、彼がずいぶん探すのを手伝ってくれてね。まだこれからも探してみてくれるんだって」