鬼系上司は甘えたがり。
 
それはけして大袈裟な表現などではなく、主任は一人で人の何倍もの仕事を涼しい顔でこなせちゃうハイスペック人間なので、私も同じように仕事をするとなると時間が足りない。

ゆえに体が悲鳴を上げる可能性大だ。

主任の仕事を側で見て勉強してみたいという気持ちも確かにあるけど、なんせ話が急すぎる。

じっくりとっぷり考えさせてもらわなければ。
 

けれど、私の考えは脆くも崩れ去る。


「ま、薪の気持ちがどうであれ、もう部長には話を通してあるから、月曜日にでも言われるだろうよ。というわけで、挨拶回りがてらに紅葉狩りに行くぞ。メシ食ってさっさと帰れ」

「……、……」


あぽーん……。

こんなことって、こんなことって!


その後、すっかり放心しきってしまった私は、主任に言われるままにトーストと目玉焼き、サラダとコンソメスープの朝食を食べさせられ、主任の運転で部屋まで送り届けられ。

軽くシャワーを浴びて着替える間、車の中で待っていた主任に連れられるままに紅葉狩りに行き、そこの近くの、行楽シーズンになるといつも見開き2ページで広告を載せて下さる主任のお得意様である温泉旅館に挨拶に行った。
 
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