オフィス・ラブ #3

恵利って、呼んでほしい?


眠りにつく直前、新庄さんが訊いた。


特には、と答える。

それは正直な思いで、私はもう、いっそこのままでもいいと感じていた。


私たちなりの、始まりや歴史がこう呼ばせているわけだし。

新庄さんに大塚、と呼ばれるのは、すがすがしくて、心地いい。



呼びたいですか?



そう訊き返すと、うーん、と少し考えて。

わからない、と答えがあった。



結局それか、と。

抱きあって、笑う。


いいと思う、それで。

私たちには、もう少し、時間が必要なんだろう。


無理に何かを変えようとしなくても。

その時が来たら。



きっと、風が吹く。




広すぎるベッドは、シーツの海で、迷子になりそうになる。

そんな想いが伝わったように、新庄さんは私を胸に抱いたまま、眠ってくれた。





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