恋の魔法
いやいや、今はその突っ込みを入れるべき時じゃない。


何だか雲行きが怪しくてヤバイ。


『ラーメン…』


ケータイのあちら側から心底恨めしそうな声が聞こえて来る。


「だ、だったら、最初にそう言ってくれりゃ良かったじゃねーかよ」

『だって麻宮君、すぐ切るって言ったから~』


俺が3分で会話を終了すると思ってたんかい!!


巨大化した後、その時間内に戦いを終えなくてはいけない某国民的ヒーローじゃあるまいし、そんな短時間で決着がつく訳ないだろがっ!!


「な、なんだよー俺のせいかよー」


俺はただ綿貫の声が聞きたくて…。


愛しい人の声を鼓膜に焼き付けてから眠りにつこうと思っただけなのに…。


『…』


綿貫は無言だった。


彼女は別に、食い意地が張っているワケではない。


寝食も忘れて編み物に没頭、なんてこともしばしばやらかしてしまうみたいだし、その気になれば、ずっと食べないでもいられるタイプなのだ。


しかし、いったん「私は食物を欲している」「目の前にあるこれは、私が消化するべき物」と判断したら、決して残したりはしない。


美しい箸さばきで、最後まで綺麗に食べきる。


彼女にとって、「食する」ということはとても神聖な儀式なのだ。


だからその時間を邪魔されたり取り上げられたりすると、とてつもない怒りが込み上げて来るのではなかろうかと推察する。
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