浮気者上司!?に溺愛されてます
静かな声じゃ、感情がわからない。
仕事に戻ろうと私に背を向けかけた恭介のスーツの裾を、私は思わず掴んでいた。


「あ……ごめ……」


軽く振り返った恭介に、私は自分の行動に戸惑いながら慌てて手を離した。
一度給湯室の出口に向かいかけた恭介も、苦笑しながらもう一度私に向かい合う。


「……同棲生活解消の『けじめ』に。最後に、一度だけ」

「え?」


恭介の言葉に一瞬ドキッとして、その意味を瞬時に考えようとした私に、恭介は素早く背を屈めて、フッと掠めるようにキスをした。


「な、なっ……」


慌てて唇を両手で覆って、私は意味もなくキョロキョロと給湯室内に視線を走らせた。
ここはオフィス!
仕事をする場所!
決してこんなことしていい場所じゃないのにっ……!


そんな私を、恭介は面白そうに笑うだけだ。


「……ちゃんと紫乃と決着つけてくるから、待ってろ」


恭介は静かにそう言って、私に背を向けると仕事に戻って行った。
私の胸には恭介の言葉がジワジワ浸透していって、どうしようもないくらい、ざわめいていた。
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