浮気者上司!?に溺愛されてます
その夜、私は一人で家に戻った。
妙にひんやりと感じる空気の中、手探りでスイッチを探して部屋の明りを灯す。
見慣れた部屋が、何故だかとても広く思えた。


今夜、どれだけ待っても恭介はここに帰って来ない。
そうさせたのは私自身なのに、それがとても寂しくて堪らない。


恭介を家に帰したけれど、これが別れになるわけじゃない。
そう信じて恭介から合鍵を返してもらったのに、どうしてこんな不安に苛まれるのだろう。


紫乃さんと向き合って、話し合って。
多分私には想像も出来ないたくさんの重い現実から、恭介は目を背けるわけにいかなくなるだろう。


そうなったら、恭介の中の私の存在はどう変わる?
変わらない、何も変わらないと信じていても、この世の中に絶対なんてありえない。


ずっとそばにいたことの弊害なのか。
今、恭介がそばにいない、そしてこれからはここに帰って来ないと思うと、不安ばかりが押し広がって、居ても立ってもいられなくなる。


そして、やっと気づく。
恭介に言われて、どうにも引っかかって仕方なかったその言葉。


紫乃さんの気持ちを考えたら。
去っていこうとする最愛の人に、最後に何を求めようとするか。


「……恭介っ……」


私はクルッと方向転換して、今入ったばかりの部屋を出た。


もしも、私だったら。
好きだから。最低な男だと何度罵って自分に言い聞かせても、愛してるから。


最後に、一度だけ――。
抱きしめて。キスして。愛してほしい。


ただ切なく恭介を求める言葉だけが、頭の中でリピートしている。


嫌。嫌だ。
恭介が、紫乃さんと。そんなの、絶対に嫌だ!!


私は、マンションを飛び出した。
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