浮気者上司!?に溺愛されてます
緊急連絡網の住所を頼りに辿り着いた恭介のマンションは、私のマンションから電車で二十分ほど離れた閑静な住宅街にあった。


勢いでエントランスまで踏み込んで、オートロックの操作盤を前にして、ようやくほんの少し冷静になった。


まさに二人で話し合ってるかもしれない。
紫乃さんに言われた通り、ここから先は二人の問題だ。
私は招かれざる客で、邪魔で不必要な存在でしかない。


それでも引き返すという選択肢は浮かばず、私は思いきって恭介の部屋のルームナンバーを押した。
わずかな間の後、「はい」と恭介の応答が返ってくる。


衝動に逆らえず、恭介!と呼びかけた。
そんな私に、苦笑交じりの声が返ってくる。


『なんだよ? 今、紫乃が来てるんだけど……』


その言葉に、わかっていたのに心臓がドクンと震えた。
次の言葉を続けられなくて、私はその場に立ち尽くしてしまう。


それでも。


『いいよ。入っておいで』


恭介は私にそう言った後、ロックを解錠してくれた。
目の前で静かに開く自動ドアを見つめながら、一瞬だけ躊躇して、私はすぐ中に駆け込んでいた。
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