月はもう沈んでいる。

「涙、涙の卒業式だろ」

「あっは! だな。うちのクラス、いちばん団結力あったし」

「最終的に号泣からの抱擁な」

「ぶはは。やめれ、むさくるしい」

「俺がするんじゃなくて、されるんだよ」

「引き気味の朔、見たすぎる」


くくっ、と目を細めて笑う陽のそれは、茶化しているときのものだ。やっていられない。本当に、やっていられない。


「そういや、リカ、朝一でコウタに告るって。日付変わる前にメール来てた」

「……マジで」


唐突に仲のいいクラスメイトの名前が浮上し、思わず反応してしまう。告白どうこうよりも、あっけらかんと話す陽に目を疑った。


俺たちは暇つぶし程度に恋愛ドラマを見たりするけれど、現実的な恋バナはほとんどしない。そのうちの多くが友達の恋愛事情だったとしてもだ。


何考えてんだ、こいつ……。


「なんかさ、ジンクスあんじゃん」


どっ、と心臓が早鐘を打ち始める。


「女子はネクタイ、男子は校章もらうと永遠に結ばれるってやつ」


理解できない。
そう感じるのに、熱くなるネクタイの下に眉根を寄せた。


「リカはそれにあやかるらしいけど、ネクタイと校章っておかしくね?」

「おかしいと思うなら止めてやれよ」

「止めなくてもくっつくべや、あのふたり」

「だったら放っておけよ。見守る気もねえくせに」


顔を背け、口を滑らせてしまった自分以上に、反論してこない陽に嫌気が差した。


またか……。

あの日から今日まで、俺たちはどれだけの言葉を呑み込み、喧嘩しそうな雰囲気を流しただろう。


こんなはずじゃなかったのに。時間がないと感じていたくせに、目先の1分1秒にすがることをやめられない。


大丈夫、まだ時間はある。ここまできても俺を慰める自分に、反吐が出た。
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