月はもう沈んでいる。
今日が最後の登校日。ふたりだけの卒業式。
それはずっと前から――俺が真剣に考えるより1年は早く、陽が決めていたこと。
17歳だった。
「ついに高校最後の年かー」
資源の無駄でしかない成績表を紙ヒコーキへと変身させ、ゴミ箱に照準を合わせていた俺のとなりで陽は言った。
クラスは別々だったが登下校は一緒だったし、この日も俺の家で夕食までの時間をのんべんだらりと過ごしていた。
「終業式が終わっただけで、やけにしんみりしてるな」
「朔はのんきでいいな」
陽だって明日から春休みで朝寝坊ができるのだから、嬉しくないわけがなかろうに。めずらしく気分の上がらない陽に首を傾げなら、言いようのない不安感が押し寄せていた。
「まさか、大学受験するとか言い出す気か?」
俺は笑っていたけど、ひどく乾いたものだった。陽はぴくりとも動かなかった。だから本気なのだと思ったし、残酷にもその道を阻んでやりたいと思った。
「朔は応援してくれるよな」
不安げな視線をよこしておきながら言い切る姿に、よりいっそう残酷な気持ちがこみ上げた。
「どうして俺が応援しなきゃならないんだ」
口にしてしまっては後に引けなかった。大学に入れるだけの頭も金もないだろうと、住む場所や生活費はどうするつもりだと、バイトしながら4年間勉強していく覚悟があるのかと、機関銃のようにまくし立てた。
陽は傷付き、どうして応援してくれないんだと二の腕を殴ってきたが、俺はクッションを投げつけ、やさしさだと嘘を吐いた。最低な嘘だった。