月はもう沈んでいる。
「陽……っ俺はずっと、おまえと、」
生きていけたらって。
言えずにいた言葉尻をさらったのは、頭が冴えるような風だった。
……おまえは、いつだってそうだ。追いついたと思ったらもう、べつの方を向いている。
目の前に座っていたはずの陽は窓辺に立ち、白む空を見つめていた。
「あたしは、負けない人になりたい」
まるで通り道を見つけたかのように、冷たい風は遠慮することなく俺たちに吹き付ける。
「どれだけつらくても、死んでしまいたくなっても、夢を見て、憧れて……たどり着けなくたって、進み続ける人になるんだ」
にわかに振り向いた陽のうしろでは、太陽がその光をもって全天を何色にも染めている。
ちっとも揺らいではくれない夜明けの景色と陽の決意は、耐えきれないくらい残酷で、包み隠さずにいてくれるから眩しかった。
「朔のとなりはいつも、あたしのスタート地点だった」
何も言えず、息さえ止めて、彼女を見つめ返す目には涙が溜まっていた。
そんな言葉が欲しかったわけじゃないのに、胸に迫るものがあるのは、いつだって陽のとなりに落ち着く自分がいたからだ。
嫌なことがあっても、悲しいことがあっても、口にできない想いを抱えていても。
俺は、おまえがいればどんな理不尽だって乗り越えられる気がした。
陽も同じだった?
最低な1日の夜をふたりで過ごして、憎らしいはずの朝を、待ち侘びていた朝として迎えられたのか。
「大丈夫なのかよ……俺がいなくて、やっていけるのかよ」
今にもこぼれ落ちそうな涙を必死にこらえて、声を絞り出した。
未練がましいことこの上ない。でも、これが、今の俺にできる精いっぱいのエールだった。
「となりに来て、朔」