月はもう沈んでいる。
夜は明けてしまった。
あんなに冴えていた半月は薄白い雲に溶けていきそうになりながら、空に居座り続けている。俺みたいだな、と思った。
変わり映えのない田舎風景に目を移すと、ふと俺の背に手を添えていた陽がもたれかかってきた。その瞳は一心に町並みを眺めている。
ここから立ち去る準備を始めたのだ。
何が、分かれ道になるんだろう。
俺だって、出ていけるものなら出て行きたいという気持ちはあった。だけど改めて考えてみても、母ちゃんとじいちゃんをふたりにして家を出るなんて選択肢、あってないようなものだ。
これって、陽より家族のほうが大事だってことになんのか……って、何回も考えたな。
たぶん、そうじゃないんだ。
同じようで、全くべつの場所で陽を想っている。家族か陽、どちらかなんて選べない。
きっと、18の俺がした選択を、いつかの俺が後悔する日はくるだろう。
それでも陽と一緒に行かないことに理由をつけるのなら、今じゃない、と思ってしまったということ。
俺には、後ろ髪を引かれる思いが多すぎる。
「……わり、ちょっと出てくる」
ポケットで着信を知らせ続けていた携帯を無視することもできず、廊下へ出た。
「はい」
「やあっと出たか! 朔おめえ、今どこさいんのわ!?」
じいちゃんは早起きらしく、よく通る声で孫の安否を確認してきた。
「ごめん、アラームかと思って。うん、そう。もう学校」
どうせ陽と一緒だろうと的を射てくるので、素直に答えることにしている。
「おりゃあ、かけおちでもしたのかと焦ったぞ」
「……するわけないじゃん」
「しても、驚きはしねかったけどな」
「とか言って、親子そろって考えなしのバカだって怒るんだろ」
「そりゃあちげぇねえ」
からからと軽快な祖父の笑い声に、頬をゆるませた。