君の味に落とされて。
保健室は下駄箱のすぐ近くだから、中に入ってみんなが来ないように鍵を閉めておいた。
「ふぅ…」
さて、先輩を寝かせないと。
あと熱も計ったほうがいいかな。
くるっと後ろにいる先輩を振り返ると、なぜか下を向いて肩を震わせていた。
「え!え!?もしかして気持ち悪いですか!?あ、バケツは…」
「あほ…」
くくくっ、と喉を鳴らすような笑い声と共に呟かれた言葉に首をかしげる。
気持ち悪いんじゃないのかな?
「あー…笑った」
顔を上げた先輩は、目に涙を浮かべながらあたしを見た。
「え、え?」
あんなに顔色悪かったのに普通に元気そう…
「つか、お前誰?」
「え、あ、あたしは佐倉 純菜って言います」
「ふぅん?で、佐倉ちゃんは俺をこんなところに連れ込んでなにがしたいの?」
「連れ込んでって…」
まるであたしが誘拐したみたいな。
あ、でもしてることになるの?
うーん、と唸っているとまた口元に笑みを浮かべた先輩が、あたしに近寄ってきた。
「?」
近づかれると、下がりたくなってそのままそれを続けているとすぐに保健室の扉に背中がついてしまった。