君の味に落とされて。
あ、と思ったときにはドアに両手をついた先輩があたしを上から見ていた。
「みんなの前で"保健室"に行こうだなんて、大胆だな?」
「へ…」
先輩の言ってることがよくわかんないけど、とりあえずすごく顔が近くて恥ずかしい。
それカッコいいから、余計に恥ずかしい。
日常ではありえないこの出来事に、心臓がバクバクいってる。
かぁ、と顔が赤くなったのがバレないように顔をそらす。
「ど、どういうことですか?あたし、先輩が体調悪そうだったから…」
「…」
「あ!もしかして、迷惑でした?ごめんなさい、断りもせずに連れてきてしまって…」
改めて自分の行動を考えると、やっぱり衝動的にやっただけで、なんでここまで先輩を心配したのかわからない。
よく考えたら、迷惑…だよね、みんなと話してたのに。
チラ、と先輩を見上げると拍子抜けしたような顔をしていた。
「俺が体調悪いの気づいたんだ?」
「だって、顔色悪かったですよ?」
「他のやつらは気づかなかったけどな。まぁ、あんな中にいたら気分悪くもなんだろ」
あんな中って、女の子達?
「人気者だからしょうがないですね」
「…」
突然真剣な顔をする先輩に、なにか悪いことを言ってしまったかと口を押さえた。
「人気者、ねぇ…。まぁいいや、お前にはご褒美やるよ」
「ご褒美?」