君の味に落とされて。



ふいに持ち上げられた顎。

そして、一瞬の内に奪い去られる唇。


「…へ」

なにがなんだかわからなかった。

口に手を当てて、後ずさり…できない!

ドアが!


「いやぁぁぁぁあ!?」

「うっせ…」

「むぐっ!?」


口を手で思いっきり塞がれる。

と同時に、頭が玲於先輩の胸辺りに当たって、軽く抱き締められてるような体制になった。


叫ばなきゃ心臓が壊れそうだった。

い、いきなりキスなんて!

いやぁあ!恥ずかしい!初対面なのに!

この体制もさらに恥ずかしい。

「つーか、お前、なに?すげー甘い匂いすんだけど」


耳元で囁かれるそんな言葉。

うぅ、耳は…くすぐったい…。


口から手を離してもらって、一呼吸置いてから、


「家がケーキ屋なので…」

と答えた。

< 8 / 90 >

この作品をシェア

pagetop