君の味に落とされて。
ふいに持ち上げられた顎。
そして、一瞬の内に奪い去られる唇。
「…へ」
なにがなんだかわからなかった。
口に手を当てて、後ずさり…できない!
ドアが!
「いやぁぁぁぁあ!?」
「うっせ…」
「むぐっ!?」
口を手で思いっきり塞がれる。
と同時に、頭が玲於先輩の胸辺りに当たって、軽く抱き締められてるような体制になった。
叫ばなきゃ心臓が壊れそうだった。
い、いきなりキスなんて!
いやぁあ!恥ずかしい!初対面なのに!
この体制もさらに恥ずかしい。
「つーか、お前、なに?すげー甘い匂いすんだけど」
耳元で囁かれるそんな言葉。
うぅ、耳は…くすぐったい…。
口から手を離してもらって、一呼吸置いてから、
「家がケーキ屋なので…」
と答えた。