君の味に落とされて。
「ケーキ屋?…お前のせいでなんか甘いもん食いたくなった…」
「あ、あの、なぜあたしを見ながら言うんですか…」
じーっと脇から見られて、赤くなった顔を背ける。
「さぁな?」
「あ、あのよかったら食べに来ますか…」
玲於先輩はあたしの言葉を聞いて、ぴく、と少し動いてなにかを考えたあと、いや、と言った。
「俺…甘いもんとか嫌いだし」
「え、でも、さっき食べた…むぐっ!?」
またまた口を塞がれる。
さっき甘いもん食べたいって言ったよね?
ど、どっちなの?
もしかして甘いの好きなの隠してる?
少しだけ頬を赤くしている姿を見て、バレたくないんだ、と悟ったあたしは黙っていることにした。
「あ、あのあたし教室戻りたいんですけど
…」
「…戻れば?」
う!腕を離してくださいこの腕!
じたばた、ともがいてみると意外とすんなり離してくれた。
「んじゃ、俺はサボるから」
さっさとベッドに移動して、ごろんと横になってしまう先輩。
「あ…じゃあ、失礼します」
…なんだったんだろう。
ちらり、と最後に一度だけ先輩を見て、あたしは保健室を出た。