~Lion Kiss~
私は治人さんのマンションに入ると、部屋の奥の、広いクローゼットへスーツケースを取りに向かった。

化粧品や貴金属、バッグやドライヤーを詰め、服を丁寧に畳んでスーツケースに入れていく。さすがにすぐに一杯になり、私はもうひとつのスーツケースを開いた。

結局、全てのものを入れる事が出来ず、私はため息を漏らした。

……この調子じゃ、今日中に運び出せないじゃん。

なんとか大きなスーツケースを2つ運びながらエントランスを出ると、私は驚きのあまり、立ちすくんだ。

そこに、治人さんがいたから。

「コンシェルジュに頼んでたんだ。マヒルが来たらすぐに知らせてって。……久し振りだね……マヒル」

たちまち、掌にじんわりと汗が滲む。

あんなに愛しいと感じていた治人さんの存在が、今は恐怖でしかない。
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